勿忘草
 01 


一人の少女が空を見上げていた。
何をするでもなく小さな野の花の中に埋もれている。
淡いブルーの小花は皆が「勿忘草」と呼ぶ可憐な花だ。

まだ麦の芽も出ていない茶色い土の畑の向こうから少年が駆けてきた。

きょろきょろと辺りを見回し、やがて目的のものを見つけると頬を膨らませて走り寄る。

「ねぇちゃん、こんなところにいたの?もう出発するってよ」

ひょこりと勿忘草と同じ色の頭が動く。

「わかった。すぐに行くよ。チャカ」






遡ること半月前――




「帰ったの?リオネル」

「ただいま、母さん。これ、お土産」

「まぁ今年も綺麗に咲いたのね」

リオネルと呼ばれた子供からブルーの小花を受け取ると母親は微笑んだ。
リオネルは母親の笑い方が好きだった。
優しく、温かい、そんな微笑が。
が、今、その微笑は以前と違い酷く弱々しく翳りを帯びている。
父がなくなってからだ。

父がなくなったのは二年前。この忘れ名草が咲く頃だった。
畑を耕すことが大好きだった父は元冒険者で村でも随分頼りにされている人だった。
冒険者としての生活をやめひとところに落ち着くことにしてこのノーブル村に住み着いた父だったが、ギルドの親父からは時々依頼を名指しで受けるほど腕はよかったらしい。
そんな父が可愛らしい村娘に恋をし、村の入り口から近い場所に新居を構えたのはもう十七年も前のことだ。














結婚してまもなく名指しの依頼で父は『未開の森』を訪ねた。
依頼自体は未開の森で動けなくなったらしい詩人のリルピーを救出するというもので父にとっては難なくこなせるものだった。

「別に迎えなんて要らなかったのに。冒険者イシュ」

「まぁそういいなさんな。俺だとて、おまえさんに救い手が必要だなんて思ってなかったさ、吟遊詩人にして名うての冒険者レルラ=ロントン。久しぶりにこの森に入るのもいいかなと思っただけだ」

リルピー族の有名人自称レルラ=ロントンを保護し、ノーブルに戻るべく共に森を抜けようとしていて父はある場所に踏み込んだ。寒風が吹く季節だというのに、淡いブルーの春の花が咲き乱れる小さな窪地。
不思議な光景だった。

その勿忘草の真ん中にもぞもぞと動く物体をみかけ父は剣の柄に手をかけながらもっとよく見ようと窪地に近寄った。


「赤ん坊だね」

隣のレルラ=ロントンが呟く。

勿忘草と同じ色の湿った巻き毛に覆われた可愛らしい嬰児が泣きもせずその小さな拳を父に向けて伸ばしていた。
勿忘草のベッドに覆いかぶさる天蓋のような木。森の木々の間から射す木漏れ日がまるで薄布の幕のように赤ん坊を保護しているように見えた。
どこの貴族さまの揺り籠もこの天然の造形には敵うまいと思われる美しい光景だった。

「・・・おお、かわいそうに。こんな場所で一人誰を待っている」

赤ん坊を壊さぬようにそっと抱き上げた大きな手はその柔らかな重みを心地よく感じた。

「エルフの子かい?」

イシュは赤ん坊の耳を確かめる。

「いや、人間族の子のようだ」

「どうするつもり?イシュ」

「連れて帰る」

布に赤ん坊を包んで首に括りつける旧友を見ていたずらっぽくレルラ=ロントンは笑った。

「いきなり子持ちになるんだ。まだ新婚だろ」

「オーリーは優しい女だ。文句は言わないさ。なぁ、あんた、この子に名前をつけてくれないか。詩人なんだからいいのを思いつくだろ。俺はどうもそっちのセンスはなさそうなんでな」

そこからの帰り道、必死に名前を考える吟遊詩人に相槌を打ちながらイシュはすやすや眠っている嬰児に視線を落とす。ひと肌の温もりを得て安心して眠ってしまったらしい。

「もう心配はしなくていい。俺が守ってやるからな」

「まぁそういう運命なんだろうね。あんな窪地あの森にはないもの」

「・・・」

「導かれたってとこだろ。ハイエルフあたりのの仕業かなんかじゃないのかな」

あるいは魔人か・・・とイシュは心の中でそう呟く。
それでもすやすや眠るこの嬰児をあの場所に留めておく気はない。

「で、良い名は思いついたのか、詩人」

「古の詩人から名を貰ってリオネルなんてどう?」

「リオネルね。確かに俺では思いも着かない名前だな」

リオネル、リオネル・・・と口の中で繰り返してイシュは頷いた。

「うん。普段はリオと呼べばいいな。ありがとう、レルラ=ロントン」

「どういたしまして。これで僕は名付け親ってわけだね」

「だな。ときどき名づけ子の顔を見に寄れよ?」





夫が村に連れ帰ってきた赤ん坊を見て新妻はまっさきに「まぁ!」と手を伸ばした。

器用に夫から赤ん坊を取り上げる。
「なんてかわいい子。どうしたの?」

「未開の森で見つけた。辺りに親はいなかったからたぶん・・・」

捨て子だろうという言葉を夫は飲み込んだ。

「こんなかわいい子を?ああ、見て御覧なさい、イシュ。こんな小さな指」

「・・・で、君がよければだが、オーリー」

「もちろん、私たちで育てましょうよ」

妻の決断の早さには冒険者イシュも舌を巻く。

「綺麗な子。きっと美人になるわ」

「何を言って…。え?男の子だろ?レルラはこの子にリオネルと名づけたぞ」

「なんですって?」

オーリーは赤ん坊を手近にあったよいサイズの籠に降ろすとそっと包まれた布を解いていく。

「あ・・・」

「ほうらごらんなさい。女の子でしたわ」

「しまったなぁ。もうレルラは次の街に行ってしまったぞ。ロストールだかアミラルだかわからん」

「ほんとに男の方は粗忽なんだから」

「仕方あるまい。まぁいいじゃないか。男の名前でも」

「そうね。普段はリオと呼ぶわ。レルラ=ロントンがまたノーブルに立ち寄ったら考えてもらいましょうよ」

こうしてノーブルの村でリオと呼ばれる拾われた女の子は闊達に育っていった。

二年後弟が生まれた。両親はこの子にチャカと名づけた。







「やっぱり名づけが悪かったのかなぁ」

後に父イシュはそうため息を零す。
あれからレルラ=ロントンは村に顔を出さない。
もっとも人間族とリルピー族とでは人生を刻む時間が違う。
向こうは人間が及びもつかない長命だ。

まったく手のかからない子であったリオネルはすくすくと成長し、美しい容貌とすらりとした肢体で村でも目立つ子供であった。父に似てどこかがっしりした感のある弟チャカとはかなり違う。
リオネルが村の女の子たちと違うところはほかにもあって、男名前の所為なのか、彼女はまったく見た目は少年そのものだった。
まず背が高い。
そして男にしては少々華奢なのかもしれないが女の子らしい丸みと言うものがないスレンダーな体格をしていた。
髪も村の少女達のように伸ばさず男の子のよう。
そして農民の子供とは思えない上品で理知的な顔立ちをしていた。
仕草も典雅なので質素な服装をしていても人の眼を引き寄せてしまう。
まさに生まれながらの貴公子だった。
力もあるし、農作業も学問も村のどの家の子にも負けなかった。

しかし、リオネルはれっきとした少女なのだ。
長男としてならこれ以上はないくらい逞しく頼りがいのある存在なのだろうが・・・。

「だけど、リオは賢い子だから」

母オーリーは笑って娘を庇った。

「でもあの子、そのうちあなたの後をついで冒険の旅に出るって言い出すんじゃないかしら」
母の顔が曇る。

「そうだなぁ。俺の後をついでと言うよりは・・・生まれ持ったさだめというものかもしれん。あの娘にはこの村は狭すぎる」

「そうですね。覚悟だけはしておかないと」

「まぁもう少し先の話だろう。まだ十五だ」

「ええ。でも早いものですね」

「ああ」

「そして寂しいものですね。子供が大きくなるって」

「そうだな」

父の手が母の手に重なる。

「だがまだチャカは十三。立派に育ててやらなくててはな」

「ええ、お調子者ですけどあれで頼りになるところもあるのよ」

「あの性格は俺似かね。しかしすっかり姉バカに育ったなぁ」

「リオはなんでもできますからね。チャカにとっては憧れなんでしょうよ」

「確かに男のやることは何でもできるな」

小さなこの村で黄金に輝く畑を守って、愛する妻と娘と息子と暮らす穏やかな日々。
若い頃、大陸中を飛び回り名を馳せていた冒険者イシュは心からこの幸せに満足していた。

が、その幸せの終焉は突然やってきた。


「大変だ!イシュさんが!」

村人の声にリオネルとオーリーが駆けつけたときはもう遅かった。

代官ボルボラの意を受けたならず者に数人がかりで暗がりで襲われたのだ。
赴任してきたときからボルボラは決してよい代官ではなかった。
村人を弾圧し、無理難題を押し付けてきた。
村人がどうにか救われてきたのは腕っ節が強く人望もあるイシュが影になり日向になり助けてきたからだ。
が、それが村とイシュに対してのボルボラの憎しみを一掃煽る結果となった。


まだ風が寒い春の夜のことだった。

家族の下に運ばれたときにはもうイシュは虫の息だった。

「母さんを・・・頼む。リオ。チャカが母さんと畑を守れるようになるまで・・・」

苦しい息の下からイシュは蒼い髪の娘を認めると心からの信頼をこめた眼差しでそう頼んだ。

「父さん!父さん!!」

後で泣いているチャカが父を必死に呼ぶ声が聞こえる。リオネルは父の大きな手を握って頷いた。

「あなた・・・」

「オーリー。すまない。・・・おまえをずっと守ると結婚のときに約束したのにな」

「あなた・・・あなたは守ってくださったわ」

夫の死を覚悟したのだろう、オーリーは穏やかな声で涙の中にも微笑んだ。
ぐすっぐすっと村人とチャカのすすり泣く声が響く。

「チャカ」
「はい、父さん!」

「母さんと姉さんを守れる男になれ。二人を守るためになんとしても生き抜くことを考えろ。いいな」

「はい、父さん。・・・はい」

父の声はいっそう弱々しくなり、やがて眼の光が消失していく。

「・・・リオ、チャカ、父さんに祝福のキスを。あなた、天上神があなたの路を照らしてくださいますように。良い、旅を」

そういうと母は二人の子供のために父のすぐ傍の場所を譲った。

「良い旅を。父さん」

「良い、旅を・・・ぐすんっ」

父の左右の頬に口付けて娘と息子は頭を垂れた。

「いい、妻だ。・・・良い子達だ・・俺は幸せだった」

父の瞳が閉じ苦しげに上下していた胸が止まった瞬間のことをリオネルはあまり覚えていない。誰かが泣き叫んでいたような気がする。もしかしたら弟チャカだったかもしれない。

その中を母と娘は黙って立っていた。

娘の手が母の小さな手を包み込む。

「大丈夫よ。リオ。大丈夫」











父は村の外、見晴らしの良い丘に葬られた。
リオはその墓に父が好きだった勿忘草の種を蒔いた。
春になると淡いブルーが墓を優しく彩る。
今日摘んできたのもそこの花だ。父が死んで二回目の春を迎えた。


質素な葬儀の間もその後も気丈に振舞っていた母もこの二年でめっきり弱くなった。
父の墓に詣でることも儘ならないほどに。

リオは小さくため息を零した。ボルボラ締め付けはことにこの家にはきつかったし、あんなに父を頼りにしていた村人は掌を返したように遠巻きに遺された家族を見ていた。
敵意ではないが腫れ物を扱うようにだ。
関わると自分もボルボラににらまれるので無理は無いとリオネルは諦めているがチャカは腹に据えかねるようだった。

そんな中も母は黙って畑を耕し糸をつむいだ。
リオネルもチャカも父の残した黄金色の畑を守るために母を助けた。
が、一家の柱たる男を失った痛手は大きい。

無理を重ねた母は次第に寝込むことが多くなった。
たぶん、父を失った精神的な打撃が一番大きかったのだろう。

旅の癒師に見てもらったところもう先は長くないといわれた。
命の火が尽きかけているのだという。

母もそのことを敏感に感じ取っていて、自分が死んだら好きにしなさいと子供たちに言う。

「ボルボラがいる限りこの村で畑を守るのもつらいわ。あなたたちにそんな思いはしてほしくないの」

そういって寂しげに微笑む。

「リオ、綺麗な髪ね。伸ばせばきっとどこの姫君にもまけないくらい美しくなると思うのに」

「長い髪なんて私には似合わない。寒いよ。母さんのような綺麗な金色の髪なら似合うと思うけど」

リオネルは自分の容姿があまり好きではない。青味がかった銀髪にブルーの瞳は自分で見ても冬は寒すぎる。なまじ顔立ちが整っているだけに(男顔だが)余計冷たく見えてしまうのだ。

拾い子の自分はこの母に似ようはずもなかった。
父も母もリオネルの素性を理解できる年齢に達したときから包み隠さず本人に話していた。その上で本当の子供のチャカとかわらぬ愛情を注いでくれた。
ちなみにチャカは父と同じ暗褐色の髪をしている。

「ねぇ、リオ。あなたにこの村は狭すぎるわ。冒険者になるといいと思うの。父さんの結婚前の仕事よ。とても、腕の立つ冒険者だったの」

冒険者はその土地土地のコミュニティーから外れた存在だ。
冒険者ギルドに登録し、ギルドが仲介する依頼を受け、それをこなす。
簡単な手紙の配達から少しややこしい曰くのある品物の運搬、旅人の護衛、人命救助からはては魔物退治と仕事は色々ある。
コミュニティーの縛りがない自由な存在である代わり自分の行動は即自分に跳ね返るという厳しい世界でもある。
リオネルの家は今では村から一歩距離を置かれ冷ややかな眼で見られている。
故イシュの家族が何かことを起こすたびに代官からの締め付けがきつくなるためみんな迷惑顔なのだ。
そうでいて、この状況を誰かが打破してくれることを心の中では望んでいる、矛盾した心理。
そんな状況から娘を放ってやりたいと母は願っていた。


「知ってるよ。母さん」
淡青の小花を生けながらベッドの上の母にリオネルは微笑んだ。
強かった父は母の自慢なのだ。




「そうね。・・・もう耳にタコができるわね」
楽しそうに母は笑い、『もうすぐチャカが帰ってくるわね』と窓の外に視線を送った。
この子は強い子だ。きっと自分の道を見つける。
意志の強そうな娘の横顔に心配するのはやめようと静かに瞳を閉じる。


「うん。がんばって魚を釣ってくるって張り切っていったけど」

リオネルは近頃よく外に出かける弟を思った。
今日も『釣りに行く』などと言ってはいたがきっとあの男と会っているに違いない。
最近時々村にやってくるフリントという行商人をリオネルは胡散臭く感じていた。
あの男はチャカを初めとする村の血気盛んなもののボルボラに対する反発心を煽っている。
本当に行商人だかしれたものか・・・
が、病床の母に心配をかけるわけにはいかない。

「あいつ釣り苦手だからね」

「・・・・」

ふと母の相槌がないことに気づき慌てて振り返る。「母さん?」


「かあ・・・さん」

まるで少女が眠るような顔で母は逝っていた。

父が逝った日と同じ、まだ肌寒い、だけど少しだけ温かい春の日差しのなかで。


静かな旅立ちだった。
父が迎えに来たに違いないとリオネルは後々もそう信じていた。
本当に仲の良い夫婦だったから。


「母さん、良い・・旅を」


まだ温もりの残る母のそげた頬に口付けを送る。

いくつになっても少女のように純真で可愛らしい母だった。

自分を愛しんでくれた優しい人は永遠に去った。


ふっと悲しげにリオネルは笑い、髪をかき上げた。
これでもう憂えることはない。

いままでできなかったことを・・・やる。

残されたたった一人の家族、弟のために。












母の死から半月が過ぎ、ますますチャカは村の若者達と森でこっそり集まるようになっていた。

そんな弟にリオネルも決意を固めていく。


そんなとき、その男に出会った。

後から思えば必然だった。



悪代官ボルボラが嫌がらせに放った戦闘用モンスター(それは巨大なナメクジのようなおぞましい姿をしていた)に襲われた畑で逸るチャカを助けるために剣を抜いたものの不利な状況にどうすれば弟を逃がすことが出来るか頭をフルに働かせていたときのことだった。

「助太刀してやる」

そう見ず知らずの男がいきなり畑に飛び込んできたのは。

長身の男。長い金髪を後ろでまとめ三つ編みにしてたらしている。
男は二本の鋭い剣を抜くとリオネルが動くまもなくさっさとナメクジを片付けてしまった。

その身のこなしも剣の腕前も只者ではない。
手錬の冒険者かというとその服装は旅装ではあっても冒険者のそれではない。
むしろどこかの国の貴公子といった上等の服だ。
冷たいとも言える整った顔立ちのその男はモンスターの残骸を見下ろした。

「リベルダムの戦闘用モンスターか」

呟く男にチャカが興奮して言い募る。

「あんたすげぇよ。あの化け物を一瞬で。この化け物はさ、代官のボルボラが俺達から搾り取った税金で買いやがったんだ。これで村の人たちを黙らせている。ここの領主はリューガ家っていってロストールの大貴族なんだけどこんなちっぽけな領地なんか貴族は気にもかけちゃくれない」

「チャカ」

あまり余所者に余計なことは言うなと制するつもりで声をかけたリオネルだったが、チャカの口は止まらない。

「そうだ、このひとに味方になってもらおうぜ。腕も立つしさ。このひとが味方になってくれたら村の人もきっと立ち上がる。だから森の会合に・・」

「チャカ!」

この目の前の男があのフリントのように胡散臭いヤツなら警戒する必要がある。
リオネルはうかつに計画を話そうとする弟をしかりつけた。

フリントが弟達をそそのかして代官に反逆させようとしているのは明らかだ。
そしてこの男がその仲間なのかどうか見極めねばならない。

「大体の察しはつく。この地の代官に反逆する算段か。その会合とやらに俺も出させて貰おう」

「やった☆」

喜び勇む弟とは反対にリオネルは眼を眇めて長身の男を見つめた。

「信用ならぬというところかな。チャカといったか、あの少年は喜んでいるようだが」

「弟は単純なんだ。ところであなたは何者?」

「さきに貴様の名を聞こうか。小僧」

男は自分のことを少年だと勘違いしているようだ。が今訂正する必要もない。

「リオネル。この村の住人。で、貴方は」

「レムオンだ」

「へぇ」

その名に聞き覚えのあるリオネルは「なるほどね」と呟いた。
ますますもって警戒すべき相手だ。
どちら側の人間なのか。何が目的なのか。

「どうかしたのか」

「別に」

「では、いくぞ」

(この男が私が考えてる人物なら、もしかしたら可能性があるかもしれない)

村人を見捨てることも出来ず、かといって村に自分たちの居場所もない、今の状況。



はりきって前を行くチャカを追いながら、リオネルは自分の運命が動き出すのを感じていた。